アスベスト問題の勉強

公開日:2010/10/15 23:33


1.アスベストとは
  アスベストは、溶岩が冷えて固まるうちに、結晶が細長く成長して繊維状になった
 鉱物です。
 主成分はケイ酸マグネシウム塩。
 アスベストの語源は、ギリシャ語で「永久不滅」を意味する言葉からきています。
 元になる岩石の分類から、青石綿、茶石綿、白石綿の3種類が利用されています。
 
 ・細くしなやかで、折れにくくて、強い力で擦っても磨り減らない。
 ・酸やアルカリなどの化学薬品にも解けない。
 ・熱に強く、燃えない。
 ・繊維状なので、布のように織ったり、糸状に紡いだりと加工が楽。
 ・天然に産出されるので、安価
 
 と、いいことだらけ(?)で産業界ではこれほど都合がいい素材はありませんでした。
 
2.アスベストはいつごろからあるのか?
  太古の時代、土器がひび割れないように粘土に混ぜて使われていた。
 古代エジプトでは、ミイラを包むのに、アスベストで織った布が使われていた。
 日本では、平安時代の書物「竹取物語」に出てくる「火鼠の皮衣」が、アスベストだと
 思われます。
 江戸時代の発明家、平賀源内はアスベストで布を織って、火の中に入れると汚れだけが
 燃える「火浣布」というものを作りました。
 大量に使用されるようになったのは、工業化が進んだ19世紀以降。
3.現在の日本での使用状況
 建築では、
  建物の耐火被服として、鉄骨部分に吹付
  断熱材
  外壁材(窯業系サイディング)
  屋根材(彩色スレート瓦)
 などなど、いろんなものに使用されています。
 日常生活では、
  劇場の暗幕が、防火カーテンとして使用
  魚焼き網
  トースター・ヘアドライヤーなどの電化製品の断熱材
  車のブレーキパッド
 そのほか、
  化学プラントや原子力発電所の配管継ぎ手のパッキン
  接着剤
  日本酒醸造のフィルター
 などなど、用途は3000種類に及んでいます。
 
4.アスベスト使用禁止の取り組み
 海外では、
  1900年代初めころから、健康被害を指摘する論文が報告されるようになった。
 WHO(世界保健機関)が、1972年に発がん性を指摘
 1976年 スウェーデン使用全面禁止
 1983年 アイスランド使用全面禁止
 ILO(国際労働機関)1986年毒性の強い青石綿の禁止条約を採択
 
 日本では、
 1975年アスベスト吹付け作業全面禁止
 でも、その後も「代替が困難」「管理しながら使用すれば大丈夫」などとして、
 1993年まで毎年20万トンの輸入量を超えていました。
 1995年 茶石綿、青石綿の使用禁止
 2004年 白石綿使用禁止
 2008年までに全面禁止する方針
 
5.人体への影響
 アスベストの直径は、髪の毛の5000分の1と、非常に細い。
 空気中に飛散すると、長時間漂い続け無風の状態で3mの高さから落下させると、
 地面に到達するまで10時間以上かかったとの報告もあります。
 その為、非常に吸い込みやすいことになります。
 吸い込まれたアスベストは、気道の奥深くまで到達し、肺を包み込む膜などに
 突き刺さります。
 一度突き刺さったアスベストは、免疫の攻撃程度ではびくともしません。
 「永久不滅」なんですから!
 刺さったままのアスベスト部分の細胞が傷つき、遺伝子の変化が起こって
 癌(ガン)に変化していきます。
 具体的な健康被害としては、
 ・中皮腫:臓器を包み込む薄い膜にできる癌
 ・石綿肺:肺の組織が硬化して、呼吸が苦しくなる
 ・肺がん
   など。
 
 中皮腫は、アスベストとの関連性が高く、発症者の8割がアスベストを吸い込んだこと
 が原因とされています。
 潜伏期間は30年~40年とものすごく長いのと、その間は自覚症状がほとんど無いので、
 発症するまで危険性に気づかないことも珍しくありません。
 アスベストとタバコとの相性は最悪で、
 健常者に対して、アスベストだけで肺がんになる確率が5倍UP。
 喫煙者がアスベストを吸うと肺がんになる確率は50倍にUP!
 
6.今後
 潜伏期間が長いことから「静かな時限爆弾」とよばれているアスベスト。1969年以降、
 93年まで年間20万トンを超えるアスベストが輸入され、ピーク時の74年には35万トンを超えました。
 アスベスト170トンにつき、1人が中皮腫で死亡しているという研究結果があります。
 それに基づくと、今後日本では年間2000人を超える人が中皮腫で死亡することが予想されます。
 今は、時限爆弾が爆発し始めた状態であり、2003年に中皮腫での死者は878人。
 年々増加しています。40年までに10万人が中皮腫で死亡すると推計しています。