単独浄化槽の既存不適格扱い(合併浄化槽にしなくてもいい条件)

公開日:2007/09/21 16:45

 

 建築基準法第31条に、便所の汚水の処理についての規定があり、下水道法の規定する処理区域内(公共下水)では、便所は水洗便所にしなければならないと定められています。.

 そして、下水道処理区域外の場合は、政令で定める技術的基準に適合したし尿浄化槽を設置しなければならないと定められています。.
 この、政令で定める技術的基準に適合したし尿浄化槽は、現在合併浄化槽しか使えないことになっています。
 (単独浄化槽(二次処理)は、大臣認定を取得できたものが無いようです)
 
 かつては、二次処理や三次処理といった浄化槽が合併処理以外にあったのですが、平成12年の法改正に伴って、技術的基準が見直されて、原則、合併処理しかダメ(難しい)なようです。.
 ということで、新築工事に関して、浄化槽の設置が必要になる場合は、浄化槽申請も建築確認申請も、合併浄化槽を設置することで手続きが行われることになります。.
 今回、問題になるのは「新築ではなく既存の増改築等の場合は、どうなるのか」ということです。.
■既存不適格について.
 平成12年以前に設置されていた浄化槽は、もちろん合併処理以外のものが設置されている訳ですから、現在の法律には不適合になってしまいます。
 
 そういう法改正に伴って、法に適合しなくなるものが出てくる訳ですが、それを「既存不適格」として建築基準法では取り扱うことにしています。(建築基準法第3条2項).
 しかし、原則として法改正後に新築及び増改築を行う場合は、その規模に関係なく既存の部分を含める建築物全体を現行法に適合した状態にする必要があります。(建築基準法第3条第3項第三号、第四号).
 もう少し簡単に言うと、建築時は適法な状態で建築したけど、その後に法改正があったことで、古い基準で建築した建物が違法な状態になってしまった場合。それでもとりあえずそのまま使ってもいいんだけど、今度何か工事をする時には、建物全体を今の法律に適合するように手直ししてください ということです。.
 「今度何か工事をする時」というのが、建物を全部壊してしまって新しく立て直すならいいのですが、ちょびっと一部分だけ増築したりするような場合、それでも建物全体を手直ししないといけないのは大変なことになります。余分な費用も発生するし、新築よりも手間がかかってしまうことも考えられます。.
 そういう不都合、個人に対してあまりに不利な条件になるものについては、何か工事をしても手直ししなくてもいいですよという緩和措置みたいなものが容易されています。(建築基準法第86条の7第1項).
■浄化槽は既存不適格扱いできるのか?.
 話しが脱線してしまいましたが、上記の既存不適格の緩和措置が使えるものを規定しているわけですが、その中に浄化槽についてはありません!
 浄化槽は、何か工事をする時には、今の法律に適合するものに直さないといけない訳です。
 二次処理や三次処理は、合併処理へやりかえ。
 浄化槽を交換したらいいだけではなく、排水桝や排水管もやり変えが必要です。
 結構な大工事です。
 
 と思ったら、浄化槽にも救済措置があったのです。
 浄化槽の技術的基準は、「昭和55年建設省告示1292号:し尿浄化槽及び合併浄化槽の構造方法を定める件」に規定されています。
 この告示も、平成12年に改正されたわけですが、告示の最後に救済措置の文面があります。.
 告示附則第2条
 この告示の施行の際、現に設置されているし尿浄化槽、もしくは現に建築、修繕もしくは模様替えの工事中の建築物のし尿浄化槽、又はこの告示の施行日から6月を経過しないうちに設置されるし尿浄化槽で、この告示による改正前の昭和55年建設省告示第1292号第1号一号から三号までの規定に適合する構造のものについては、建築基準法の一部を改正する法律(平成10年法律第100号)第3条の規定による改正後の建築基準法第31条第2項の国土交通大臣が定める構造方法を用いるものとみなす。.
 と書かれています。何言ってるのかわかりにくいので、簡単に書くと、
 
 法改正前の告示の基準一号から三号の規定に適合した浄化槽だったら、改正後の法律にも適合しているものとみなしてOKです。
 =二次処理でもOKです。ということです。
 
 注意しないといけないのは、浄化槽の人槽が変わる場合は、合併浄化槽にやりかえないといけません。
 人槽に変更が生じない場合は、この救済措置が使える訳です。.
(その都度、念のために確認申請審査機関への事前相談をしてください)
 
 
■補足
 二次処理の浄化槽は、汚水しか処理されません。キッチンや洗濯などの雑排水は、直接排水先(水路など)へ放流されます。
 合併処理の浄化槽は、キッチンや洗濯などの雑排水も、汚水と一緒に処理する為、環境にはやさしい浄化槽です。.
 告示では、二次処理でも能力的には同じと判断しているとしても、やはり建築基準法の趣旨どおり、新しい基準に適合するように合併浄化槽へ改修することが望ましいことは確かです。