壁量の根拠

 2階建以下かつ延べ床面積500㎡以下の木造住宅の構造計画は、壁量計算によって行われます。
 壁量計算は、地震に対してと風(台風)に対しての両方で計算し、不利な方の数値で決定されます。
 壁量計算は、地震力の場合、階ごとに必要な耐力壁の数を、床面積に対して決められた数字を乗じることで算出し、その数値以上の数の耐力壁を設置します。.
 壁量計算は、構造計算の知識がなくても、簡単に求めることができるようにしてくれたものです。.
 地震力に対する壁量計算の”床面積に対して決められた数値は、以下のものです。.
■重い建物(cm/㎡)
 平屋 15
 2階建の1階 33
 2階建の2階 21
 
■軽い屋根(cm/㎡)
 平屋 11
 2階建の1階 29
 2階建の2階 15
 
 この数値の根拠は何なのか。.
根拠---------------------------------------------------
 
1.前提条件
(1)固定荷重(建物自重)
 ①屋根荷重 重い屋根(瓦葺等)    900N/㎡(屋根面当り)
         軽い屋根(スレート葺等) 600N/㎡(屋根面当り)
         
  屋根面積は、軒の出を考慮して、面積を1.3倍とする。※1
 
  もうちょっと詳しくいうと
  重い屋根
   瓦葺き(下地・垂木含む、母屋含まない)640N/㎡
   母屋(L≦2m)50N/㎡
   天井(石膏ボード9mm、野縁下地含む)200N/㎡
   計890N/㎡→900N/㎡
   
 ②床荷重 500N/㎡(床面積当り)※2
 
  もうちょっと詳しくいうと
   畳敷き(床板、根太含む)340N/㎡
   床梁(L≦4m)100N/㎡ ※3
   計440N/㎡→500N/㎡
    (60N/㎡は、間仕切壁だと思います)
    
 ③壁荷重 600N/㎡(床面積当り)※4
  
  もうちょっと詳しくいうと
  階高2730mm、床面積52.17㎡(3間半*4間半)の場合、
  壁面積=79.5㎡(すべて壁の場合)
  木ずりしっくい塗(下地含む・軸組み含まない)340N/㎡
  軸組み(柱・間柱・筋かい含む)150N/㎡
  計490N/㎡
  490*79.5=38955N 38955÷52.17=746.69N/㎡
  実際は、窓が付くので、その分壁面積が減って、600N/㎡
  
(2)積載荷重(家具など)
  600N/㎡(床面積当り) 
  これは、地震力算定用の積載荷重。
  
(3)地震層せん断力係数=0.2
(4)高さ方向の分布=地震力分布係数Ai
  Ai=1+(1/√αi-αi)*(2T/(1+3T))
   T:建物の一次固有周期(秒)
     T=h(0.02+0.01α)
       h:高さ
       α:柱・梁の大部分が木造・S造である階の高さの、
        合計の高さに対する比→木造なので1
     T=0.2 ※5
     αi:=建物重量の分布にかかわる数値
        上部の重量が重くなるほど大きくなる
     αi=0.3
      
  Ai=1.4
        
2.建物の重量の算定
(1)重い屋根の場合
 (1.3*900+600/2)=1470N/㎡→1.47kN/㎡
  600/2は、壁の床面積あたりの重量を、建物の階高の上半分とする
(2)居室
 (500+600+600)=1700N/㎡→1.7kN/㎡
        
3.必要壁量の算定.
 2階=地震層せん断力係数*地震力分布係数*屋根重量*1/耐力壁許容耐力
 1階=地震層せん断力係数*(屋根重量+2階重量)*1/耐力壁許容耐力
 
 (重い屋根の場合)
 2階=0.2*1.4*1.47*1/1.96=0.21m/㎡→21cm/㎡
 1階=0.2*(1.47+1.7)*1/1.96=0.323469…→0.33m/㎡→33cm/㎡
 
 (1.96は、壁倍率1の許容耐力1.96KN/mです。)
 
 ■重い建物(cm/㎡)
 平屋 15
 2階建の1階 33
 2階建の2階 21
 
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 ということで、地震力に対する必要壁量の数値が決められています。
 
 ここで注意が必要なのは、数値の根拠になる条件設定がいくつもあるということです。
 
※1 軒の出に対する割増1.3は、床面積52.17㎡の建物で、軒の出450程度になります。
   ということで、あまり軒の出が大きくなる場合は、壁量の割増が必要と考えられます。
   
※2 現在は、畳敷きよりもフローリングの居室が多くなりましたので、床荷重は軽くなっています。
   しかし、床下地は根太から剛床になってきているので、下地の重量は増加しています。
   そのことを考えると、あまり余裕が無いことになります。
   
※3 床梁は2間程度のスパンに対する梁重量になっているので、スパンをもっと飛ばすような場合は、壁量の割増が必要と考えられます。
   
※4 壁荷重の根拠は、あまり重たい壁を考えていないようですので、ALC板張りなど重たい壁になる場合は、壁量の割増が必要と考えられます。.
※5 建物の揺れる周期を示す一次固有周期Tは0.2ですが、0.2÷0.03=6.67mとなります。建物の高さが、急な屋根勾配などで高くなる場合は、壁量の割増が必要と考えられます。.
 以上により、木造住宅の計画の際、特殊なプランになる場合は、壁量の割増を考慮する必要があると思います。