住宅設計手法

 住宅は、人の体を育て健康を維持する他に、人格を形成する(精神を育てる)大切な場所です。
 人の生涯の中で一番身近な存在(建築物)であり、一番関わる時間が長い場所でもあります。
 住宅が、体と心を育てる場所だからこそ、居心地がよく豊かな空間でなければなりません。.
 居心地がよく豊かな空間を創り出す為に、どういうことを考えながら設計を行うか、”住宅設計手法”としてまとめました。.
 この住宅設計手法はあくまでテクニック・表現方法の一例で、大切なのはどんな空間をつくりたいかをイメージすることです。
 テクニックは、空間を表現する為の方法にすぎません。
 テクニックに頼り過ぎて、技術を無理やり詰め込むことに走らないことが大切です。


「住宅設計手法」
 1.遠近法と連続性
  ・外部と内部の境界を曖昧にする。
  ・外の一部としての内、内の一部としての外
  ・部屋と部屋、上下階が、その場所だけで完結せず連続することで、豊かな空間を作り出します。(豊かさとは、寸法以上の広さだったり、家族の交流だったり)
  ・建築物は、空間の一部を仕切ることで、まったく別の空間を創り出すことですが、仕切るからこそ大きな空間の一部だということを忘れてはいけません。大きな空間=外部が無ければ、仕切られた空間=内部も存在できない(創り出すことができない)ということです。.
 2.概念
  住宅は概念の塊であり、人は概念が無いと生きていけません(生きるのが大変です)。ですが、概念と向き合い最終的には概念から解き放たれ自由になることを目指し、その為に悩んだり考えたりしながら生きていきます。
 そういうことで、居心地のいい落ち付く空間は、ある程度概念が必要です。住宅らしさという概念が、安心感をあたえ、居心地の良さにつながります。
 そのうえで、概念にとらわれない空間(いろいろな用途に利用できる空間や部材)を用意することで、感受性や想像力を育てることができます。.
 住宅を、あらかじめ使い方(用途)が決められた部屋の集まりにしてしまわず、住む人がさまざまな使い方を創造できる空間である住宅が、人の心(想像力、感受性)を育てます。.
 3.感受性
  五感を刺激するような空間にする。=光・風・音・温度・肌触り・香り
  ・住宅が概念で空間を仕切って造られた人工物だからこそ、外部の自然の豊かな表情にはかないません。内部を暗くすることで、より外部の明るさを感じることができます。
 4.精神性
  万物に宿る神様・精霊を感じ敬う心が、日本人の精神には息づいています。家づくりに関わったたくさんの人々の思いを感じることができたとき、住宅に命を与え、住宅が家族の一員のような存在になれます。それは愛着に繋がり、住宅や家族を大切にする心になります。
 ・建築材料で唯一の生物材料である木材を使うこと
 ・使っている木材が生まれ育った場所を知ることで、より身近に感じられること
 ・家づくりの思い出、家で育っていく家族の思い出
 5.想像力と自由性
 ・隠れている部分を想像すること
 ・自由な使い方を想像すること
 ・設計が住宅の自由を奪い、限定せず、住む人が自由に使えること。